着物は奥が深いと昔から言われますが、深さには、大まかに3つのベクトルがあるように思っています。
①【反物ができるまで】糸ができるまでや、織りや、染め、産地、文様の意味、素材などなど、反物になるまでも、奥が深く。
②【ファッション】着物と帯、小物のコーディネート、格や、TPO、着付け、文様の意味などなど。
③【仕立】そして、仕立ても、本当に奥が深く
その3つのベクトルがそれぞれ深いのだから、もう、本当に、奥が深い。
◎お客様からは、見えにくい仕立のこと
良く考えてみると、着物の奥深さというのは、
①と②の奥深さは、どのお店も、声高らかに発していて、お客様も選べるものですが、
③の仕立については、反物を選んだ以上、お店にまかせるしかできない部分になります。
だから、どうしても、軽視されやすい分野なのではないかと思うのですが、
仕立士と専門店の想いが一番反映される部分でもあるとも言えます。
着物を買われるときには、仕立てについて、色々と質問をしてみると、お店の姿勢が
分かりやすいかもしれません。まずは、「仕立てはどちらでされますか?」から始めてみましょう。
いろいろな想いのある店主であれば、きっと、そこから、話が広がるでしょう(笑)
◎お客様には、見えなくても、手を抜かない。
そんなわけで、
いつものように、店主と、仕立士が、侃々諤々。ひとつの付け下げの着物の
仕立て方について話し合っていたので、写真を撮ってみました。
小紋と違い、付け下げや訪問着は、柄の配置が最初から決まっているので、
その通りに、裁って、仕立てればいいのですが・・
この考えだと、仕立士に反物を丸投げすることになります。
そうではなく・・。
お客様の雰囲気や好みを理解し、着物の素材や染め、着たときのバランス、着る場所、
お客様の家族構成、希望などを、理解している店主と、
和裁の専門である仕立士と、それぞれの考えを突き詰めながら、どうやったら、理想が実現できるかを話し合うのです。
身長により、バランスを考えます。
時には、お客様の好みや、
まだあどけなさの残るお子様の着物の場合も、色々と考えぬきます。
細やかな配慮、それを実現させる知識や経験で、雰囲気がぐっと変わってくるのです。
◎素敵な着物姿には欠かせない細やかさ。
素敵な着物姿というのは、そんな奥深さに、どこまでも寄り添おうとする細やかな配慮があるからこそ、
すてきで上品になるのだろう・・
なあんて、想うこの頃。
言わなければ、お客様には伝わらない部分ですが、
どこか、仕立て上がった着物に、品と緊張感が伝わるような
そんな仕上がりを心がけています。
今回の店主の眼は、店主の姿勢を若女将がレポートしました(笑)。