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執筆者の写真佐々木呉服

流れに逆らいながら-原点回帰ー



先日、とあるお客様を思い浮かべながら作り上げた着物が染め上がってきた。

このお客様には、こんなのが、必要なのではないか・・と一点お見せするのです。

 ずらっと並んでいる中から選んで頂くのとはちょっと違います。

 作る・と言葉で言うと簡単ですが、実際は、とても神経を使って作り上げます。毎回、神経をすり減らすように真剣勝負です。

■原点回帰  


私がやっていることは、今の業界から言うと、真逆を進んでいて、自分では、原点回帰などと読んでいます。

時代は、革新、革新の連続で、伝統だって、これまでの形を捨てて、革新により伝えられてきているわけですが、

私は、その流れを原点まで、さかのぼるような感じです。

江戸時代の、三井越後屋という呉服屋さんが大きくなった一つに「店(たなさき)売り」があります。ずらっと、商品を並べて売ることが、大きくなった理由の一つにあげられますが、

そのもっと前の呉服屋さんは、

お客様の希望や好みに適うきものを、一点、一点、呉服店が誂えて、おつくりしていた時代がありました。

それは、じっくりと長いお付き合いがないとできないことであり、お客様と長いお付き合いをしていくことで、次は、どんなものが必要でお好みなのかもわかってくる。

長いお付き合いをすることは、お客様にとっても、本来は、利点の多いことなのです。

■一期一会の想いで


今は、割引商法や、展示会商法、

呉服専門店による作家の個展や人間国宝展など

いろいろな販売の仕方があるけれど、

いつも着物を着られるお客様のことを考えると、

お客様と長いお付き合いをさせていただいて、お客様の好みや想いを汲み取りながら、

また、それ以上のものをお見立てすることが、本当は大事なのではないかと思っています。

長いお付き合いをしていただけるというのは、簡単なことではありません。

 着物で〇〇の会、能を見にいこう・・など

 そういうお付き合いで、重ねていくこととは違う関係です。

少しずつ、一期一会の想いで、

お会いするとき、お任せいただいたことを、一点一点大事に

突き詰めて向き合うことでしか、作れないと、

ただ、ひたすら、まっすぐに。

この想いを、分かって下さる方は少ないかもしれません・・。

効率的且つ効果的な方法とはだいぶ、違う方向性です。


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