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  • 執筆者の写真佐々木呉服

いくばくの年月を経ようとも。



名古屋帯 梅 お正月

この写真は、名古屋帯だが、売り物ではない。

というのも、もう、売り物とはならないほどの年月を経ているからだ。

もう、かれこれ、30年近く経っているかもしれない。

棚の奥から久しぶりに出してきた。

売り物にはならないだけに、悩んだが、それでもなぜ飾るのかと、問われれば

見れば、やはり、心がハッとするからだ。

絵を飾るような感覚だ。

それほど、私の大好きな帯だった 。

いやいや、過去形ではなく、

いま見ても、やはり、なんて、良い帯なのかと、つくづく思う。

良いものには力があるというが、

本当にその通りで、この帯が飾ってあるだけで、何やら力が沸き上がってくるような気がする。

あっという間に、周りの空気を変える。


梅 名古屋帯

■良いもの、上質、本物と言うのは、簡単たが。

良いものとは、何も、人間国宝でなくても、

名前が通ってなくても、あるもので、

高価な値段でなくても、名前がなくても、

良いものかどうかを見る眼を持たなければならないと常々思っている。

この帯に話を戻すが、

生地質、箔の使い方、絶妙な色合い。そして、大胆な構図。勢い。

同じようなものを作ろうと思っても、

一つ色を間違えれば、野暮ったくもなりえる。

この雰囲気で、何か作りたいと思うが、そう簡単に作れるものではない。

数十年前、このような心が動く着物が

次から次へと出来上がってきた時代であった。

こんな着物との新たな出会いがなくなり、久しい。

着物も、ある程度の流行があるのも確かだが、

時代を超えるものは、芸術と呼んでも良いように思う。

祖父や父の代にお誂え頂いた着物を、今でも大切に手入れをし、世代を超えてお使いいただいているお客様が、当店はとても多いが、

あいがたいことに、お手入れで戻ってくるたびに、何度見ても、心がはっとし、今も感動させて頂いている。


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